アルツハイマー病を予防するために
6月14日は“認知症予防の日”
“認知症予防の日”は、アルツハイマー病を発見したドイツの精神科医アロイス・アルツハイマー博士の誕生日(1864年6月14日)に由来して、「認知症予防の大切さをより多くの人に伝えること」を目的として日本認知症予防学会が制定しました。
認知症とは、認識・記憶・判断する力が脳の障害によって低下していき、社会生活に支障をきたす状態のことです。
認知症には様々な原因がありますが、「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」が多く、この3つを「3大認知症」と呼んでいます。
アルツハイマー型認知症
認知症の6〜7割を占めるとされるアルツハイマー病は、アミロイドβ(タンパク質)が、約20年間にわたり徐々に脳内に蓄積することが原因の一つとして考えられています。
アミロイドβが蓄積することで海馬が萎縮し、脳の神経細胞が死滅していくことで、記憶障害や見当識障害などの症状が現れます。
現時点では、死滅した脳細胞を元に戻すような薬や治療は困難で、予防が重要であるとされています。
アミロイドβは睡眠中に排出される
アミロイドβなどの老廃物は、脳だけでなく全身で作られますが、全身に張り巡らされているリンパによって排出・除去されています。
脳の中では、寝ている間に排出されることがわかってきました。
睡眠中、脳が縮んで隙間ができることによって、アミロイドβなどの老廃物が脳脊髄液に流れ込み除去されているという仕組みです。
眠っている間に老廃物を排出しているということは、言い換えれば、睡眠時間が十分でなければ排出されないということです。
睡眠不足の状態が続くことによって、アミロイドβの排出ができなくなり蓄積していくことが、アルツハイマー型認知症のリスクを高めてしまっているのです。
睡眠不足の原因は数多く存在しますが、まずは日常生活の中で、何が原因になっているのか自覚しておく必要があります。起床から就寝までの時間・行動を振り返りながらゆっくり考えてみるのも良い方法です。
血管性認知症
老化や生活習慣病の進行によって血管壁がもろくなり、脳梗塞や破裂などの脳血管疾患を引き起こすことで認知機能が段階的に低下していく認知症です。
血管性認知症の根本原因は動脈硬化で心疾患や脳卒中とも同様に高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙が深く関係しています。
若いうちから食事と運動に気をつけることで十分に予防できる病気です。
レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症、血管性認知症と並び、3大認知症の一つとされています。
αシヌクレインというタンパク質が集合して、神経細胞の中でレビー小体という塊が作られ神経細胞の働きが悪くなることによって、運動のスロー化、手足の震え、幻視、睡眠障害、失神、バランス失調、転倒などの症状が現れてきます。
αシヌクレインの蓄積だけの「純粋型」と、アルツハイマー病の変化を伴う「通常型」に分類されます。
認知症予防のために・・・
認知症は高齢になるほど倍増していくものですので、長生きをすればするほど発症リスクは高まります。
認知機能が年齢とともに低下していくことは誰でも当たり前のことですが、機能低下のスピードを緩めて、認知症の発症を遅くするように予防していくことが重要です。
そのために、有効な予防法で絶対に外せないのは、姿勢を正しくすることです。
正しい姿勢がすべての病気予防の基本です
きれいな姿勢を保つとどんな良いことがあるのかというと、胃腸などの内臓系、肺や気管支などの呼吸器系の働きを正常にします。
特に、腸は脳の神経細胞と密接に情報のやり取りをしている為、脳を活性化する為には腸内環境を整えておくことが大切です。
そして、背骨に沿うように走っているのが自律神経。
現代人は興奮状態の時間が多い為、心拍数が上がって呼吸も浅くなりがちです。ヒトは、体の構造上、必ず下を向いて作業するようになっていますので、姿勢が悪くなるのは当たり前です。
態度とメンタルは繋がっていますので、普段から良い姿勢をするように気をつけていると、ストレスにも強い体質になります。
明るくポジティブな人って背筋がピンとしてイキイキしていますよね。
逆に、姿勢が良い人で、暗くていつも体調が悪そうな人ってあまり見たことないですよね。
このように、姿勢は精神にも大きく影響しているのです。
例えば、うつの初期症状には睡眠障害があります。
姿勢が整っていると自律神経のバランスも整うので、良質な睡眠を得ることができます。
ですから、気がついたときに姿勢を正してあげることが必要です。
それから、正しい姿勢でいるだけで体幹が鍛えられます。
実は、姿勢を支える筋肉と呼吸のための大事な筋肉は共通しています。
赤ちゃんは生まれたあと、最初にすることは「泣く」という行為です。
泣くためにつかわれる筋肉は、背骨に一番近い筋肉で、一生呼吸をするのに重要な筋肉です。
私たちの体調がおかしくなるときというのは、体の深部の筋肉が衰えてくるのが始まりです。
猫背がクセになっているひとは、腹筋が弱くなって、肩甲骨を引き寄せる筋肉が常に前に引っ張られて緊張しています。本来は体幹を使って体を動かすはずが、その衰えをカバーするべく、外側の筋肉で動こうとする為に、その状態が続くと、痛みやしびれなどの症状がでてきます。
体の深層部の筋肉が弱くなると、直立二足歩行の機能がおとろえ、サルコペニアやロコモを引き起こし、二本足から3本足(つえをついた状態)、3本足から6本足(手押し車)になり、その先には寝たきりが待っています。
背骨が丸くなるということは、首が前方へ傾斜し頭への血流量が減少するため脳の機能低下につながりますので、1時間に1度は背伸びをしたり、上を向いて首の運動をすることもお勧めします。
正しい姿勢を保つことは、筋肉バランスを良い状態にし、適正な体温を保ちます。
体温36度7部が美人の体温と言われていますが、体の熱は筋肉と食べたものからつくられます。
筋肉の状態が整っていなければ健康的な体温でいることが難しくなります。
目指すべきは毛細血管量を増やすことです。
毛細血管量を増やすには、正しい姿勢での有酸素運動が効果的です。
きちんと筋肉を伸縮してあげることで運動器の故障を防ぎ、ロコモ予防とその先にある介護予防につながります。
認知症予防に効果的な栄養素
また、認知症リスクの低下と関連があると言われている栄養素に、ビタミンD・ビタミンC・ビタミンE・ビタミンB12・オメガ3系脂肪酸が推奨されています。
干し椎茸を食べたり、日光浴でビタミンDは作られますし、野菜・果物・肉を積極的に食べることでビタミン・ミネラルを摂取できます。
また、くるみやナッツ類、まぐろ・さば・さんまなどの青魚の脂肪分にはオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。
アボカドや緑茶も積極的に取り入れてほしい食品です。
その他の認知症予防に効果的なこと
その他にも、喫煙とアルコールは脳を萎縮させてしまうことが明らかですし、スマホ・パソコン・計算機などで記憶したり計算したり考えなくても良くなったことが認知症の若年化につながります。
そして、なによりプラス思考であることが脳を活性化させ健全に保たれる秘訣でもあります。
“寝だめ”していませんか?
アルツハイマー病のところで、睡眠不足に触れましたが、気をつけていただきたいのは“寝だめ”です。
忙しい方は特に、休日や週末の“寝だめ”に頼ってしまいがちです。
“寝だめ”は、生活リズムを乱し、平日の睡眠に支障をきたす行為ですので、できる限りいつも通りに起床し、平日の睡眠時間を少し増やすなどして調整することが効果的です。
良質な睡眠をとるために
- 寝る1時間くらい前にヌルめのお風呂に入る
- アルコールを適度な量に控える
- 寝る前にスマホやパソコンの使用を避ける
- 寝なければと意識しすぎない
ようにすると良いでしょう。
口の中も認知症と深い関係が・・・
内外からうけるストレスによって交感神経が高ぶり、歯ぎしりやかみしめるなどの症状が出たり、睡眠障害を引き起こしたりします。
実は、正しい噛み合わせは脳からα波を出し自律神経を正常にします。リラックスした状態は良質な睡眠へと促します。
また、口の中の金属が溶け出すことによってアルツハイマー病になりやすくなるなど、脳が異常をきたすこともわかっています。なるべく金属を使わない素材のもので被せ物をすることもお勧めです。
虫歯と歯周病はきちんと治し、歯のないところには歯を入れて正しい噛み合わせを保ちましょう。